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 なお、マニュアルの前段には、「エレクトーンの歴史・概要」、「機能・記譜サンプル」があり、これに関連して岩崎氏は、「エレクトーンの歴史としてはハードウェアの変遷、つまり鍵盤の段数や音域が大規模なものから徐々に現在の普及形に縮小されていった経緯がある。また、音色がAWM音源のようにデジタル化するにつれて、音色やその他の機能の各種設定を記憶させ、それを瞬時に切り替えることができるレジストレーションメモリーが備わった。エレクトーンの特徴の大半はつまるところこのレジストレーションであり、“エレクトーンを理解すること”=“レジストレーションを理解すること”に近い」と述べた。
 また、エレクトーン演奏家で、作曲家でもある福地奈津子氏(常葉学園短期大学)は、今回のようなマニュアルが多くの作曲家にとって新たな入り口になって欲しいと述べる一方、「作曲家はマニュアルから得るかもしれない固定観念に捕われずに作品を制作して欲しい。ここで重要なのはやはり作曲家と演奏家とのコミュニケーションである」と強調した。
 プレゼンテーションの後、休憩を挟んでオリジナル作品の事例演奏が行われた。演奏曲目は藤原嘉文氏作曲「Metamorphosis 」(演奏:藤村亘氏)と安彦善博氏作曲「To The Sea 〜海へ〜」(演奏:山木亜美氏)の2曲。それぞれの演奏の前に、作曲者と演奏者から作品に関するコメントや演奏に至るまでのコミュニケーション等のエピソードが語られた。
 まず「Metamorphosis 」について、作曲者の藤原氏は、作品の制作において楽器の可能性を知ることが重要であると述べた上で、自身の作品で用いているセカンド・エクスプレッション・ペダルの記譜法についてや、ディレイ効果をカノンとして扱っていること、またMDRの再生と同時に即興演奏する部分について説明した。また、演奏者の藤村氏は、初演を担当した海津幸子氏の使用したデータを参考にしながらも自身の解釈による音色作りを目指したこと、特殊な記譜法についてはやや戸惑ったものの、作曲者とのコミュニケーションにより理解が深まると同時に作品の内容についても共感できたこと等を語った。
 次に「To The Sea 〜海へ〜」について、作曲者の安彦氏は、エレクトーン奏者の演奏は音色を作ることも含まれるという考えを示し、また特殊な効果については、楽譜ではあくまでどのような音響効果を求めているのかを指定するに留め、奏法は奏者に委ねるという姿勢であると述べた。演奏者の山木氏は、自分としては音色の指定がない方が作品に取りかかりやすく、楽譜からのイメージをもとに音色作りをしていくと話しながらも、結果的に作曲者が抱いていていたイメージと異なり、そのギャップに戸惑う場合もあると述べた。
 2つの作品が演奏されている間、参加者の面々は配付された作品の楽譜を見ながら、奏法や実際に出てくる音響に耳を傾けていた。
 今回のマニュアルの発刊は以前から強く望まれており、関係者のみならず多くの作曲家やエレクトーン奏者にとって大変喜ばしいことであった。一方、今後エレクトーンにおける技術が日々進歩していくにつれて作曲の手法が進化していくのもまた当然であろう。「現代作曲家とエレクトーン」という関係図がもっと広く認知されていくためには、岩崎氏がワークショップの冒頭で述べたように、「このマニュアルは初版であるが、これからも広く作曲家や演奏家の意見を聞きながら改訂し続けていく」姿勢が重要であろう。今回のワークショップをきっかけに、エレクトーンに興味を持つ作曲家が増え、またエレクトーンにおける作曲手法の可能性が更に広がっていくことを期待したい。



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